花篠長編12
「スピード落ちてきてるよ!!」
「はい!!」
「自分の守備位置イメージして!!」
「はい!!」
「最後までボールから目離さない!!」
「はい!!」
2人のやり取りが、こっちのベンチまではっきり聞こえる。
「もっとボールに食いつきなさい!!」
「はい!!」
最近、花井くんの練習がみんなより過酷な気がする。ほんとに、気がするだけなんだけど。
私はちょっと休憩で、アイちゃんを撫でていた。
「すごいねえ、ね、アイちゃん。」
「クウン。」
「ふふっ。」
ああやって、がむしゃらに頑張る人って、すごくかっこいいなあ。
「あーした!!」
「はい。次!!」
「っしあす!!」
花井くん終わったみたい。フラフラになりながら、こっちに歩いてきた。
「お疲れーわっ!!」
ボトルから汲んだ麦茶を渡そうとしたら、花井くんによっ掛かられてしまった。そのまま、またベンチに座ることになる私。彼の身体はぐだーってしてて、動かない。
すごく頑張ったんだね。
「わ、わり、篠おか。」
「だ大丈夫だよ。」
はい麦茶、って言って麦茶を渡すと、彼は起き上がって、それを一瞬で飲み干してしまった。
「練習すごいね。」
「あれぐらい、なんてことねえよ。」
強がりとか、そういう風には聞こえない。
「俺は、田島を越えたいから。」
自信に満ちた声と表情。
キラキラとしたその姿に、私は見惚れてしまった。
2010.8.13
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