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「茶の知識は残っているんだ。知識は。しかし、茶に対する情熱が消えてしまったというか、好きな気持ちが降格してしまったというか。
これからどうすればいいんだ。あの時のように刺激を与えたというのに、元に戻っていない。このまま不埒な男と化してしまうのだろうか」


それって遠まわし遠まわし、ぼくが不埒な男だって肯定しているよな? そうだよな?


若干不機嫌になるぼくに気付かずブツクサと独り言を呟いている仲井は、意を決したような面持ちを作り、顔ごとこっちを見てくる。


「お互いの気持ちが戻るまで、これからの学校生活はなるべく共に行動するぞ」


「え゛?」腹の底から声を出してしまうぼくに、仕方がないだろと仲井が不機嫌面を作る。
 
「お前の気持ちがおれに、おれの気持ちが貴様の中に宿っているんだ。元に戻るまで共に行動するのが最善の策というもの」

「そ、そりゃそうだけどさ」


「それに、だ。貴様の言動によっておれの茶に対する気持ちが穢れるかもしれん。今は茶にしか興味が持てんようだが、万が一のことを考えると……、一緒にいてもらうぞ。中井英輔」


うそ、だろ。おい。

なんで苦手意識を持つ仲井と学校ライフを楽しまないとにゃらんのだ。

片頬を引き攣らせるぼくを余所に、「気持ちが戻るまでの間」なんびとも女との戯れは控えてもらう。


仲井は禍々しいオーラを放ちながら、ぼくの襟を掴んだ。
 
 

「いいな、中井英輔」

 

もはや出るのは溜息ばかり。
 

ぼくは返事の代わりに肩を落として項垂れた。


不幸だ、ぼくは世界の誰より不幸な目に遭っているに違いない。
  
  

 

To be Continued...





2012.12.02


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あきゅろす。
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