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<1>ある意味キャラチェンです。




―――…世の中は不思議ミステリーで溢れている、らしい。ぼくは身を持って経験している。現在進行形で。


 

「中井。来週の日曜、合コンがあるんだけど行かねぇ?」
 
 
ぼくの名前は中井 英輔(なかい えいすけ)。

好きな物は女の子。
趣味は合コン。
特技は女の子を口説くこと。

何処にでもいそうな健全男子高生。

ぴっかぴかの一年になって二ヶ月を迎えている。

ちょいとした自慢だけどぼくは合コンのプロ。
合コンのサラブレッドとはこのぼく、中井英輔を指しても過言じゃない。

それだけぼくは女の子を口説くのが上手いってことだ。


ちなみに現在の合コン勝敗率は五分五分。凄いだろ!

え、半々じゃないか? ばっか、女の子を舐めていると火傷するぜ!
 

女ってのはおだてりゃ落ちる、口説いてナンボ。

ぼくの友人はそんなことをほざいていたが、正直顔洗って出直して来いって話だね。

女の子は落ちてくれる振りが上手いんだ。

口説きだけで落ちてくれる女の子もいるけど、大半は落ちている振りをして野郎の言動を観察してくる。


そういう手厳しい生き物なんだよ。

いや、その厳しさがまた女の子の良さなんだけどね。
 

とにもかくにもぼくは女の子が大好きだった。

彼女こそいないけれど、女の子と談笑して、口説いて、ひと時を愉しむ。


その時間は夢心地そのもの。


嗚呼、女の子って素晴らしい! 野郎にとって天使であり女神であり天女な存在! そう思うくらいぼくは女の子が大好きだった。


ま、悪い意味で簡略すると、相当な女ったらしなぼくだったりする。


酷いよなぁ。

ぼくはただ単に女の子が大好きなだけなのに!

そう、ぼくは女の子が大好きなんだよ。
  
 
 
「中井、聞いてっか?」
 
 
 
顔を覗き込まれ、ぼくは我に返って返事する。
 

「ごめん水谷。今回はパス」

「え、マジで? 華のN校生徒が来るんだぞ? あそこはカワユイ子で一杯だって有名な女子校なのに、お前来ないの? 雨でも降るんじゃね?」
 

水谷が真ん丸お月さんの目で瞠ってくる。

片手を挙げてごめんと謝罪するぼくに、「ナニ読んでるんだよ」お前はジジイか、と水谷。

ぼくは引き攣り笑いを浮かべて、なんでもいいじゃないかと持っていた雑誌を閉じる。


その雑誌には達筆な字で【和みの茶道】と書かれていた。


茶の道と書いて【さどう】と読むそれ。

一般的な【茶】の読み方を考えて【ちゃどう】と読んでもいいだろうに、主流の読み方は前者だという。


何故だい? 日本語の読み方は時々捻れていないかい?!

女の子はクール系素直男子が好きなんだぜ?

捻くれてちゃあ女の子に嫌われちまうってもんだ。
 

「茶道ねぇ。女子を口説くには地味くね?」


するとぼくの中で凄まじい激情に駆られる。
 

「お前は茶を何も分かっちゃいないぜ!」


茶の心を地味と称すなんて、お前はそれでも日本人か!

第一茶道は女を口説くためにあるもんじゃない! 茶を嗜めるためにあるもんなんだ!


机上を叩いて熱弁。
直後、ぼくはハタッと我に返って恐る恐る水谷を見やる。


そこには唖然とした顔でぼくを見つめている友人が。


嗚呼、やっちまった!
 

じわりじわりと羞恥心が込み上げてきたぼくは、「やっべ用事を思い出した!」ちょっと外に出てくると相手に一笑。

椅子から腰を上げていそいそと退室した。
 
 

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