00-03
一々性別を気にしてくる九条のみみっちい性格に私は苛立ちを覚えて仕方がなかった。
男装までして登場したんだから、私の気持ちを酌んでくれてもいいじゃない。
私だって趣味で男装をしているわけじゃない。
チームに入れて欲しくて手を打ったまでなんだ。
生半可な気持ちで男装をしていると思われているのならば、それは心外の他に何も当てはまらない。
鋭い眼光を受け止め、視線を返す私に九条は舌を鳴らし、オンナは足手纏いだと再三再四口走ってくる。
「チンタラつるんでいるどこぞの不良達とはワケがちげぇぞ。オンナなんざ入れたら、チームの弱点になる」
「弱点にならないよう気を付ければいいだけの話よ」
何度もそう言っているのに、なあんで分からないんだろう?
この頓珍漢。
こっそりと悪態つくと思いのほか、相手に伝わっていたようで九条がギロッと眼光を鋭くしてくる。
「ったく、なんで分からないんだ、このオンナは。だからオンナなんざ嫌いなんだよ、めんどくせぇ」
「安心して。私もあんたが嫌いだから。しかも語頭に大をつけて嫌いをお贈りしマス」
ぴくりと眉根を微動させる九条は低く呻く。
とにかく俺は大反対だし、舎弟も取らないときっぱり言い切った。
「大体」
不良の舎弟ってどういうもんか分かっているのかと九条が質問してくる。
不良の舎弟。
それってあれでしょ。
その不良の弟分になるってことでしょ?
それくらいの意味は知っている。
私の答弁に、それだけじゃないと九条は突っ返した。
地元の不良ワールドでの舎弟は、そいつを弟分にすると同時に自分の“後継者”というニュアンスを持つ。
つまり私が九条の舎弟に志願するということは、九条の後継者として振舞われるというわけだ。
顔と頭だけは優れているオトコの後継者ねぇ。
簡単に言えば、私が副リーダー後継者になると考えていいのかな?
まあ、どうでもいいけれど。
「ダーイ、いいんじゃねえか? みよ子ちゃんを舎弟にしちまっても。みよ子ちゃんをチームに入れること、俺は許可するぜ」
と、ここで第三者が私達の話に割って入った。
そいつは短髪を真っ赤に染め上げている不良で、左目下に泣きぼくろがあるのが特徴だ。
奴の名前は三枝 旭(みえだ あさひ)。
九条の属しているチームの頭で年は私の二つ上。
ちなみに九条と同じ高校に通っている、これまたエリート生だ。
不良のくせにエリート校に通っているなんて、なんだかすっごく胸糞悪いんだけど。
いや今はそれどころじゃない。
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