相合い傘をしよう
『……あの…』
「ん?なんだ」
『私は鞄の中に折り畳みがあるんですけど』
「気にするな」
何故、私は折り畳みがあるにも関わらず会長と相合い傘をしているんだろう……内心嬉しくてたまらないけどね。
相合い傘をしよう
「夫婦といったら相合い傘だろ!」
『結婚は来週ですよ?』
「お前と俺が付き合い始めたときから俺たちは夫婦みたいなもんだ」
『えー…』
「あと、高校のときの癖で、たまに“会長”って呼ぶのいい加減にやめろ」
『すみません。一樹さんって呼び慣れてはいるんですけど、会長の方がまだ慣れてる感じで』
「なんだそりゃ……っと、もっとこっちによれ、濡れるぞ」
『は…、はい…っ』
急に肩を抱かれてついピクッと身体を反応させ、心臓が跳ねる。1週間後、私たちは結婚して本物の家族になるわけだけど……ドキドキは日々募るばかりでドキドキで死んでしまいそうだ。
「そんな可愛い反応するなよ…襲って下さいって言ってるようなもんだぞ?」
『おそ…っ?!』
「あはは!こんなところでは流石に襲わねーよ。………誰にもみせたくないからな、お前の可愛い姿も、声も」
『きゃ…っ!!み、耳はやめて下さい!!!!』
突然低い声で耳元で囁かれる。一樹さんは私が耳を弱いのを知っていて、よくこうしてからかってくる。身がもたない…
「………こうしてさ」
『はい?』
「…雨が降ってなくても、相合い傘さして寄り添って生きていきたいよな」
『……私は、一樹さんの側にいますよ?離れません、離れたくないんです。…………離しません、一樹さんを。好きです…から』
「あー…もう……ほんと、お前は…」
――バシャッ!!
会長が傘を地面に投げ、私を抱きしめたのはほぼ同時だった。
『かず…』
「はは…やっぱお前すげーよ。頭ん中、お前ばっか」
『(それは私もなのに)』
「なあ…もう一回言ってくれよ………好きって」
『……す…きです…っん』
「ん…っ」
抱きしめられていた腕が緩んだかと思うと、一樹さんの顔が近くにあって、雨と一緒に、キスの雨が降ってきた。
「好きだ…っ…愛してる」
『一樹さん…』
「なぁ…もう少し、抱きしめたままでいいか?てかそうさせろ」
『ふふっ…風邪ひいちゃいますよ?』
私たちは暫く抱きしめあっていた。雨なんか気にしない…寒くない、むしろ暖かい。この心地よい体温を感じながら、これからも一緒に寄り添って生きていくんだろう。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「男の子か女の子か…くぅー!!早く知りたいぜー」
『ふふっ、男の子だったら一樹さん似は嬉しいけど、少しは強引さなくして欲しいかも』
「女の子だったら大変だな。……ま、悪い虫はとことんつぶ…」
『今から親バカでどうするんですか(女の子だったら危険かもな…)』
「逆にお前似の男だったら……まぁ、それはそれでありか。ドジなとこは似ないでほしいけどな」
そんなこと言いながら、一樹さんは私のお腹を撫でながらぴっとりと寄り添っている。まるで…相合傘のように。
ずっと、これからも私たちはこうして相合傘をさして生きていく。一樹さんは「相合傘だけには子供はいれられないな」なんて言っていた。相合傘には二人しか入れないんだって。
ずっと…ずっと側にいて、離れない、離さない、離さないで。ずっと…ずっと幸せに…――
貴方以外はお断り
End.
(お腹の子も、いつか相合傘に大切な人をいれる日が来るんだろうな……そんな幸せな未来を、一樹さんの力でみるのではなく、二人でつくっていくんだ)
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