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Dark
4


ねぇ、目を開けて。
ほんの数秒でもいいから。


どうか、オレの声を聞いて欲しい。





「……会いたかったよ?」

「……何だテメェ」


繁華街の裏通りを進んだ、人気の無い場所にある古びた建物。
元スナックであった其処の、立て付けの悪い扉を開けると、探していた男が、いた。


初めは、突然の来訪者に情けなくもビクついた男は、入ってきたのがチビでヒョロい男だと分かると、直ぐ様威圧的な表情をつくり凄んだ。


苛つき、殴り掛かってきそうな男に、オレは笑いかける。


あいたかった。
凄く……気が狂いそうに。


「……やっと、見つけた」

「……はぁ?」


訝しむ顔付きの男に向けてオレは、後ろ手に持っていたものを突き付ける。


「………っ、」


一瞬、何を持っているのか、理解出来なかったらしい。男は数秒間を置いて、息を詰め、目を見開いた。


ズシリと重い、黒い鉄の塊。
指を掛け、セーフティロックを、ゆっくりと解除する。


「アンタで最後。……鬼ごっこは漸く終了」

「……ひぃいっ!」


不様な悲鳴をあげながら、男は後退る。
躓いた男は、辺りの物にぶつかり、ガランガラン、と派手な音が響いた。


コツ、


靴音を鳴らし、一歩近づく。


「やめっ……来るなっ!!来ないでくれ!!」


散乱した荷物を掻き分けながら、男は床を這いずりながら逃げる。


「……わ、悪かった!!オレが悪かったから、助けてくれ!!」


どいつもこいつも、命乞いのセリフにオリジナリティーが無い。
まぁ、当り前か。
生死の分岐点に無理矢理立たされた人が思う事なんて実にシンプル。『生きたい』きっとそれだけ。


「け、警察に自首する……見逃してくれたら、罪を償うからっ……!!頼む!!」

「…………罪を、償う?」


男の必死の懇願を、オレはおうむ返しした。
ソレを確認と勘違いしたのか、ガクガクと首が取れそうな勢いで何度も頷く男に、オレは問う。


「償えると、おもうの?」

「……え?」

「暁良の怪我は、アンタの人生何年分で償えると思っているの?」


怒るでも苛立つでも無く、淡々と問うオレに、男の顔が強張る。


「数年で贖えると、本気で思っているなら、救い様が無い。……アンタは刑務所から出た途端に、死ぬまで命を狙われ続けるんだ」

「っ!!」


御門暁良を害するという事は、そういう事。


「そんな地獄を味わう位なら、オレに頂戴。……きっと、とても喜んでもらえるプレゼントになると思うんだ」


口角を吊り上げ、うっとりと笑む。
両手で拳銃を構え、照準を合わせた。




上手く出来たら、喜んでくれるかな。
目を覚まして、くれるかな。


アンタに、伝えたい言葉があるんだ。





「助けっ、」

―――パァン、


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あきゅろす。
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