Dark
Silent Flame [青&凛]
※青さん視点です。
(???←凛←青)
全部、壊してしまいたい。
そう言ったお前の笑顔は、あの頃のまま。
無邪気で柔らかい、
オレが惚れたお前のままだったから。
「……そうか。」
オレはお前を見つめたまま、静かに笑んだ。
ビュウ、と吹き荒ぶ風が、陰の綺麗な黒髪を揺らす。
ビルの屋上。
落下防止のフェンスに手をかけ、眼下に広がる夜景を、漆黒の瞳にうつしながら、陰はクスクスと鈴のような笑い声をあげた。
愉悦に細められた瞳に宿るのは、狂気。
薄紅色の唇を吊り上げ、笑む彼からは、むせ返るような色香が立ち上る。
平凡と表される容姿ながらも、明るい性質と優しい内面、そして溌剌とした魂で色んな奴を惹き付けた彼は、もういない。
いるのは、
妖しい色香で惑わし堕とす、
哀しい夜叉だけ――。
「…あの人を殺したこんな世界なんて、オレは、いらない。……壊れればいい。」
冴え凍る冬の三日月のような瞳で、陰は凄艶な笑みを浮かべた。
「あいつら皆、――狂って死ねばいいんだ。」
断罪する、その姿は、オレが愛した少年とは最早かけ離れているのに、
それでも、オレは――
「…オレを、使え。」
「……………。」
オレの言葉に、陰が振り返る。
呆気にとられたように瞠られた瞳は、少しだけ昔の面影があった。
無言でオレを見ている陰に、オレは言葉を重ねる。
「…オレを手駒として、使え。………復讐するんだろ?」
奴らに。
オレの呟きに、陰の瞳に、蒼白い焔が灯る。
それは、憎悪。
哀しみに息絶えそうになっていたコイツを生かした、唯一の、もの。
ならばオレは、その焔を守る番人になろう。
倫理も道徳も正義も知ったことか。
コイツが、手を汚すなら、
オレも汚そう。
コイツが、狂うなら、
オレも共に狂おう。
「……………。」
無言でオレに背を向けた陰に近付き、その細い体を後ろから抱き締める。
「……………一緒に、堕ちてくれるんですか…?」
泣きそうな儚い声で呟く陰の髪に、キスを送り、抱き寄せる手に力を込めた。
「…馬ぁ鹿。……お前みてぇな危なっかしい奴、一人に出来るワケねぇだろ?」
お前が望むなら、地獄の果てまでだって、
一緒に行ってやるよ。
例え世界が、お前を『悪』と呼ぼうとも、
誰がお前を間違っていると言ったとしても、
構わない。
お前が望むなら、
なんであろうと差し出そう。
まずは、
手始めに、この世界を。
(狂ったのは、どっちが先だったんだろうな。)
END
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