Parallel
1
※黒さん視点です。
スゥ……
吸い込んだ煙が、肺を巡る。タールの重さと苦みを感じながら、ゆっくりと吐き出した白い煙が夜空に上り、すぐに風にかき消された。
「…………」
壁に寄り掛かり、見上げた空は雲一つ無い。
都心に近い為、ネオンの灯りやスモッグに邪魔され、星は見えないけれど、少し欠けた月がぽっかりと浮かんでいた。
「……そろそろ、か」
腕時計を確認したオレは、そう呟くと携帯用灰皿を取り出し、まだ半分近く長さがあるソレを押し付けて消した。
タタッ……、
小さな物音がした。
それに気付いたオレは、息を潜め出来る限り気配を消す。
見上げる塀の上に、手が掛かる。少女の様に華奢では無いが、未成熟な、手。
次いでヒョコ、と小さな頭が覗いた。
キョロキョロと辺りを確認しながらも、伸び上がった少年は、塀に足を掛ける。
何回も逃亡を阻止されているからか、しきりに出入り口である門の辺りを気にしているが……、残念。
「……おーい。」
「!?」
突然声を掛けた為、驚きにバランスを崩した少年が、上から落ちてきた。
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