Parallel
10
※黒さん視点です。
オレの部屋で眠るって事は、ある程度信頼はされているんだろうが…、
完全に、では無い気がした。
拾って来た野良猫が、部屋の隅で丸まっているみてぇに、距離がある。
出会ったばかりで無茶言うなってモンだが、出来ればもっと信頼して欲しい。
「……治ったら、出てっちまうのかな。」
不思議な感覚だった。
本来、オレは他人の事情に深く入り込む性質では無い。
目の前で弱っている者を見殺しに出来る様な外道では無いつもりだが、自分の家に招き入れる程お人好しでは無かった。
精々、人を寄越して救急車を呼んでやる位だ。
なのに、何故か倒れたコイツを見て、自宅に連れ帰ってしまった。しかも結構不様に動揺しながら。
「……………。」
手を伸ばし、少年の髪を撫でる。まだ熱が下がりきらないのか、少し熱い。
「……何なんだろうな。この離れがたい感覚は。」
一人、答えの出ない呟きを洩らしながら、オレはため息をこぼす。
…なぁ、と語り掛けようとして、未だ眠り続ける野良猫の名前を、知らない事に気付いたのだった。
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