Parallel
6
雑炊は、三分の二ほどでギブアップした。
その人は気を悪くした様子は全く無く、逆に『熱があるのに、ちゃんと食ったな』と、オレの頭をまた撫でる。
すっかり幼児扱いなんだけど、不思議と不快では無い。
薬を飲むと、もう少し寝ろ、とベッドに押し込まれる。
肩口まで布団を引き上げられて、照れくささと共に、懐かしさが込み上げた。
病気で、誰かに心配されるなんて久々だな…。
「……あの、」
「…ん?」
ウトウトと舟を漕ぎながら、声を掛ける。
ベッドサイドに腰掛け、オレの眠りを誘う様に髪を撫でていたその人は、優しい声で続きを促した。
「どした?」
「………あの、……ありがとう、ございました…。助けてもらって…良くしてもらって…、」
「構わねぇよ。…いいから、休め。」
「……はい、」
名前を呼ぼうと思った。この優しい人の名前を。
でも、穏やかな黒い瞳を見ているうちに、気付けば違う名で呼んでいたんだ。
「……おやすみなさい、……黒さん。」
「………、……ああ。おやすみ。」
少し驚いた様に瞠られた瞳が、ゆっくりと優しく細められるのを見ながら、オレは意識を手放した。
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