Parallel
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心配し、伸ばされそうになる手を、かぶりを振る事で止める。
だが彼の心配そうな表情は、払拭されるどころか、更に深まった。
「……そこまでして頂く謂(いわ)れがありません。」
「………………。」
「見ず知らずの方に、これ以上お世話になる訳にはいきません。…ご迷惑をおかけした上に、看病までしていただき、有り難うございました。このお礼は改めて…」
「はい、ストップ。」
急に畏まり、そんな事を言い出したオレを難しい顔で見ていたその人は、頭を下げようとしたオレを、そう言って遮った。
大きな掌が、顔の前に翳される。
「………………。」
ガキが、可愛く無い事言うな。
そう、呆れられるかもしれない。厭(いと)われるかもしれない。
そんな覚悟をしながら、彼の言葉を待つ。
だが彼は、オレを真っ直ぐ見たまま、予想外の事を言い出した。
「…じゃあ、」
そんな言葉から始まりツラツラと並べられたのは、彼の氏名年齢現住所。
趣味に特技、好物、苦手なもの、チームの総長をやっている事まで教えてくれた。
「仲間内からは、総長…後は『黒』と呼ばれている。」
「……………。」
「……これ位で、『知り合い』に格上げ出来ねぇか?」
『見ず知らず』じゃないのだから、いいだろう。なんて、
この人は何処まで、大きな人なんだろう。
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