Parallel
3
オレの額に、大きな手が押しあてられる。
形の良い眉が、僅かにひそめられた。
「…大分下がってはきたが、まだあるな、熱。」
そう言いながら、手に持っていたものをオレの額へと貼った。
貼るタイプの保冷シートは、ヒヤリと心地よい冷たさをオレに伝える。
「もう少し休んだ方が良いが…その前に、食欲ある様なら何か食え。」
彼はベッドを下り、椅子に掛けてあったシャツをオレの肩に掛ける。オレので悪いな、と言いながら。
オレはそんな彼を、戸惑う様に見上げる事しか出来なかった。
この人とは、初対面な筈だ。
…何故か妙に安心してしまう何かはあるものの、それは間違いない。
それなのに、何でこんなに良くしてくれるんだろう。
見ず知らずのガキなんて、放っておけばいいのに。
行き倒れを見捨てる事に良心の呵責を覚えるのなら、救急車を呼ぶだけで十分なのに。
…こんな、
「……どうした?気分悪いか?」
こんなにも、優しくされる理由が無い。
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