Parallel
2
「………………。」
見知らぬ男が、其処に居た。
艶やかな漆黒の髪と、吸い込まれそうな闇色の瞳。
数多の女性を虜にする様な、雄々しくも甘やかな美貌。
「………………?」
…馴染みのある人では無い。けれど、記憶に引っ掛かる。
思い出そうとして、眉間にシワを寄せるオレを見たその人は、綺麗な顔に苦笑を浮かべた。
「…野良猫みてぇな反応するな。心配しなくても、取って食いやしねぇよ。…それより体調はどうだ?」
「………………あ、」
優しい眼差し。
それは、路地裏で意識を飛ばす直前に見たものだ。
『…迷子か?坊主。』
低くて甘い声音が、耳に甦る。
「……あの時の、」
オレが呟いた言葉に、男は『正解』と言葉無く表す様に、苦笑を優しい笑みにかえた。
「急に倒れるから驚いたぜ。見たとこ熱がありそうだったからな…勝手に持ち帰った。」
此方に手を伸ばす彼から身を引きそうになるが、男はオレの額に貼ってあった何かを剥がしただけだった。
ソレをゴミ箱に放ると、枕元の台に置いてあったものを手に取り、男はオレを手招く。
「……………。」
何だろう。
この人には何故か、警戒心が継続しない。
不思議に思いつつも、呼ばれるままに彼に近寄った。
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