Parallel
1
「…………………、」
………暖かい。
その日の目覚めは、とても優しいものだった。
頭は痛いし目元はヒリヒリするし、体調は全く良くないのだけれど、それが気にならない程、その温もりが気持ち良い。
「……………、」
無意識のままソレを求める様に引き寄せれば、笑う様な気配がして髪を梳かれる。
……人?誰?
母さん…じゃない。母さんにしては感触が堅い。咲とも違う。
……御門?
キュ、と服を掴めば、背中に腕が回された。幼子をあやす様に、守る様に。
「……っ、」
―――違う!
此れは違うと、オレの五感が叫ぶ。
感触が違う。
匂いが違う。
音が違う。
それに何より、御門はこんな慈しむ様な行為をしない。
こんな、優しい感触など、知らない。
「……っ!」
泣きたくなる自分の中の甘えを振り払う様に、バッ、と飛び起きる。
優しい拘束を解き、距離をとると、
「………………。」
驚いた様に瞠られた、漆黒の瞳が、オレを見ていた。
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