Parallel
10
「…………、」
フラフラの足取りで、街を彷徨う。
あてども無く、ただ進んでいるうちに、いつの間にか、やけに懐かしい景色に辿り着いた。
「……………此処、は…………」
大通りから入り込んだ路地、
高いビルの壁に囲まれた狭くて薄暗い場所。
コンクリートの階段には、相変わらず空の瓶がいくつも転がっており、
あの時と同じまま、その場所はそこにあった。
「……………、」
ペタリ、と階段に腰掛ける。
はぁ、と息を吐き出して空を仰ぎ見た。
広がるのは薄曇りの夜空。
星は元より見えないが、少し欠けた月も霞み掛かって見える。
けれど、雪がちらつく事は、無い。
「………っ、」
あの日は、やりなおせない。
雪は降らない。
御門が来る事も、無い。
オレを拾ってくれる事も、
「………っ、」
浮かんでくる涙もそのままに、オレは天を仰ぐ。
どんなに望んでも、時は戻らないし、
戻ったところで、オレの望む未来は紡げない。
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