Parallel
7
「……送るよ。帰ろう。」
そう言って背を押され、オレは呆然としたまま店を出た。
志藤さんは、オレを抱き寄せ、バイクが停めてある場所へと向かう。
「…………、」
上手く頭が働かない。
それでも、ぼんやりとした頭で思う。
帰るって、何処に?
もう、必要無いのに。
あそこは、オレの居ていい場所じゃなくなってしまったのに。
「…………、」
ピタ、と足を止める。
「………斎藤君?」
不思議そうに覗き込む志藤さんに、オレは俯いて、肩を抱く手から逃れた。
「…………帰れ、ません。」
帰って、迷惑そうな顔をされたら、
そうでなくとも、彼から別の人のにおいを嗅ぎとってしまったら…オレ、は、
……もうオレは、完全に彼の気に入ったオレじゃない。
生きる事と死ぬ事に、違う意味を見つけてしまったオレは、もう、
彼の興味の対象外。
「……此処で、いい、です。……」
「……………御門のところに帰るのが、いや?」
「っ、」
.
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