Parallel
5
「何か食べる?」
「……………。」
甘い笑みを浮かべ、オレを覗き込んでくる志藤さんに、オレは無言で、フルフルとかぶりを振った。
志藤さんは気を悪くした風でも無く、そっか、と呟く。
「……………、」
会話は早々に打ち切られ、沈黙が落ちる。
志藤さんは何が楽しいのか、ニコニコ笑いながらオレを見つめているが、オレは気に留めず、自分の思考に捕われていた。
……御門は、拾ってからずっと毎夜、オレを抱いてくれた。
『存在理由』をやる、と言った言葉通り、オレを生かし続けてくれた。
……それなのに何故、今日突然手を放されたんだろう。
ただでさえ頭の出来が良くないのに、熱で朦朧とした状態でまともな考え事が出来る筈も無く、
もう、いらないのか、なんて悪い想像ばかりが頭を占めて、
胸が、軋んだ。
「……ね、斎藤君。…帰ろう?」
「っ!?」
優しい声音が、至近距離で耳朶を打つ。
いつの間にか距離を縮められ、肩を抱かれていた。
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