Parallel
3
「…………。」
日下部さんは、オレの言葉に、目を瞠る。
暫く無言が続き、次いで、困ったように視線を外した。
「……御門は?」
それでもオレは、繰り返す。
頑ななオレの様子に、日下部さんは、やがて長く息を吐き出した。
「………今日は戻らないそうだ。」
「…っ、」
今更、――今更だ。
毎日毎日抱かれているが、一緒のベッドで眠った事など無い。
欲望を吐き出した後は、用無しだと言わんばかりに、オレの隣からいなくなる。
言葉も殆ど無くて、たまに一緒にいても、甘い雰囲気なんて皆無。
他人より希薄で、
そのくせ爛れた関係。
最悪な関係だって、分かっている。
――それでも、
オレにとって、一瞬だけの触れ合いとその温もりは、
かけがえの無いもの。
アイツがくれたたった一つの『約束』と同じ、
大事な、大事な、たからもの。
「………何処、?」
「君っ、」
ふらつく体を無理矢理起こした。
支えてくれようとした手を跳ね退け、オレはもう一度繰り返した。
「…暁良は……何処にいますか…?」
哀しげな日下部さんの黒檀の瞳にうつるオレは、
泣き出す手前の、迷子の子供そのものだった。
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