Parallel
2
御門が出ていって程なく、日下部さんが入って来た。
ろくな説明も無かったらしく、憮然とした顔付きだったが、オレを見て表情を一転させ、僅かに目を瞠った後、
そういう意味か、と苦々しく呟いた。
「……く、さか…、」
…?
変だ。上手く声が出ない。
コホ、と小さく咳をすると、日下部さんはオレに駆け寄る。
「ああ、無理はするな。」
心配げに眉をひそめ、日下部さんは、オレの肩をそっと押し、ベッドへと横たえた。
前髪をかきあげ、日下部さんの手がオレの額に触れる。
御門程ではないが、オレよりは大分大きい、骨張った神経質そうな手は、ヒヤリ、と冷たい感触をオレに伝えた。
見上げた先、硬質なイメージの美貌が歪む。
「…随分熱が高いな。」
「………………ね、つ?」
「ああ。症状を見る限り、風邪だろう。」
………風邪。
そっか。
寒かったのは、そのせいなんだ。
「薬を用意するが…その前に、なにか食べた方がいいな。欲しい物は、あるか?」
「……………、」
優しい表情で、優しく声をかけてくれる日下部さんの言葉に、オレの脳裏に浮かぶのは―――、
「……み、かど……何処…?」
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