Parallel
1
その日は、なんだかやけに寒かった。
御門の家は、どの部屋も当然冷暖房完備で、湿度もちゃんと適度に保たれている。
けれどオレは何故か、寒くて寒くて仕方なかった。
頭は何故かぼんやりとしていて、霞み掛かったように、ハッキリしない。
「………凛?」
ベッドの上で、毛布に包まりボーッとしていると、低い艶のある声に、名を呼ばれた。
キングサイズのベッドの端にいたオレは、後ろから手を引かれ体を引き寄せられる。
抱き込まれた腕の中見上げれば、宵闇のような藍色の瞳が、オレをうつしていた。
「………………。」
するのかな、とぼんやりと見上げていると、
御門はオレの額に手をあて、眉をひそめた。
「……………みかど?」
「………………。」
御門は無言でオレを離し、毛布で包みなおし、その更に上から布団を被せ、自分はベッドから立ち上がる。
「…………御門っ?」
何も言わずに離れて行く姿に、オレは不安が募り、ベッドから上半身を起こす。
「……寝てろ。」
呟かれた言葉は、特に不機嫌でも無いが、御門は此方を見ようとしない。
バタン、と閉じられた扉が拒絶のように感じられて、
オレは泣きそうな心を抱え、その場から動けなかった。
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