Parallel
7
「……み、かど…」
「………………。」
オレが小さく呟いた瞬間、オレを抱く腕に力が込められる。
笑みを消した志藤さんは、此処にいたいと呟くオレの言葉を無視し、オレを抱き上げた。
「…み、か」
「もう黙って。…眠いんでしょ?寝ちゃいな。」
志藤さんは、幼子をあやすような仕草で、甘くオレに囁く。
「御門じゃない。…今、君を抱いているのは、オレだよ。…しずか、だ。」
瞼に押しあてられる、柔らかな感触。
チュ、と音をたてて繰り返されるソレが何か思い至らないまま、オレはぼんやりと思う。
店に、…溜り場にいろって言われたのに。
待ってろって言われたのに。
いないオレを、御門はどう思うんだろ。
…捨てられちゃわないかな?
約束を破ったオレとの約束なんて、反古にされちゃわない?
やだ。やだよ。
いらなくなった時は、終わらせてくれるんでしょう。
捨てる前に、
――アンタの手で。
「………み、……………………………あき、ら。」
「…っ!!」
息をのんだ音とともに、激昂したような、強い感情を感じたその時、
「…そこまでねー。しずちゃん。」
去った筈の人の、緩い声が響いた。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!