Parallel
5
「…名雪と、仲良いんだ?」
「え?」
烏龍茶をコクリと飲み込むと、はかっていたかのようないいタイミングで、問われた。
見ると、志藤さんはニコニコ笑っている。
…けれど、その瞳は、何故か笑っていなかった。
「……仲良い、ってほどじゃないです、けど。」
その、底知れない瞳に気圧されつつも、正直に返す。
悪い、とは言わないが、良いといえる程親しくは無い。
つい先日初めて会ったばかりだし、普通に話はしてくれるが、知り合い、の範囲を出ない程度の間柄だ。
けれど志藤さんは、その解答に満足していないのか、薄い色彩の瞳を眇めた。
「…っ、」
「…隠さなくてもいいのにー。名雪と普通に会話してるだけでも、結構レアな事なんだよ?アイツは興味無い人間は、視界にすら入れないからね。」
剣呑な瞳は、一瞬にして、人懐っこい笑みにおおい隠されたが、ソレが逆にオレの恐怖を煽る。
嫌いなら、嫌い、と正面きって言われた方がマシだ。
こんな風に、優しげに笑いながら、事あるごとに激しい感情を向けられるのは、キツい。
しかも、その感情の種類が分からないから、余計に。
憎悪?嫌悪?
そんな分かりやすいものじゃない。
この人の目は、そんな分かりやすい色をしていない。
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