Parallel
4
「…………………。」
名雪さんは、無言でじっとオレを見ていた。
いつ見ても、紅茶色のアーモンドアイズは、全く底が見えない。
オレに考えを読まれるようじゃ終わりかもだが、それにしても考えが読めない人だ。
だが、いつもの面白がる様子は、何故か無くて。
少し瞳を眇めた名雪さんは、やけに大人びた顔で静かに告げた。
「…良い判断だ。その野生のカンは信じて正解だよ?」
「え…?」
その言葉に、オレは呆然とする。
「……喰われたくなきゃ、気を抜かない事だね。………蜘蛛の罠は、巧妙で粘着質…至るところに張り巡らされている。」
気付いた時には、もう手遅れだから。
ひっそりと呟かれた言葉に、オレはゴクリと息を飲んだ。
「お待たせー。」
暫くして、グラスを両手に持った志藤さんが戻ってきた。
彼が席に来ると同時に、名雪さんは、席を立ち上がる。
「あれ?名雪、どしたの?」
「んー?…眠いから、帰るわー。」
名雪は、ポケットに片手を突っ込み、振り返らずに、ヒラヒラと手を振りながら出ていった。
後ろを通るほんの一瞬、オレだけに聞こえるような声で、
「…気ぃ抜かないようにねー。」
と忠告じみた言葉をのこし、店の外へと消えて行った。
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