Parallel
3
「…図星?」
名雪さんは、言葉さえ出ないオレに、勝手に答えを見付け、飄々と笑った。
「……はい。」
オレが頷くと、名雪さんは少しだけ驚いた顔をした。
たぶん、オレが志藤さんを苦手としている事が意外なんじゃなくて、オレがすぐに認めた事が予想外だったんだと思う。
驚きはすぐに、底の見えない笑みに取って代わった。
「…何で?しずちゃん、優しいでしょ?」
「……はい。優しい、です。」
確かに、優しい。
いつもニコニコ、優しい笑みを浮かべてるし、オレの事も、気にし過ぎってくらい気を遣ってくれる。
その仕草に、嘘臭さはなくて、裏に嫌悪や嘲りも感じない。
なのに。
「………でも、目が…」
「………………。」
時折、…ほんの極稀に、志藤さんは、何とも言えない目で、オレを見ている。
今迄明るく笑っていたのが嘘のように、仄昏い瞳で。
その目が、――オレは怖い。
まるで振り払っても振り払っても絡み付く蜘蛛の糸のようなその瞳が。
「……………。」
確証は、無い。
オレのこれは、漠然とした不安感。
けれど、本能が告げるんだ。
あの人は、危険だ、と。
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