Parallel
4
「………。」
怪訝な顔で、カップとオレを見比べた日下部さんは、受け取ろうとはしなかった。
「……何のつもりだ?」
オレはまた苦笑しそうになりつつ、自分の分のカップに口をつける。
「別に大した意味は無いです。…ただ単に、一人分のコーヒーをドリップするのが嫌だっただけ。」
正直にそう告げると、日下部さんは、じっとオレを見て、予想外にも、カップを受け取った。
…絶対、断られると思ったのに。
しかも、飲みおわった彼は、律儀に『ご馳走様』と呟いてカップを置いた。
…何て真面目な人なんだろう。
オレは笑いたい衝動を堪え、お粗末様でした、と答え、2つのカップをシンクへ運んだ。
「…お待たせしました。」
部屋の鍵を持って、彼にそう言うと、日下部さんは、部屋から出て行く。
オレも後に続き、鍵を閉め、彼の隣に並んで歩き始めた。
「……………。」
「………………君は、」
暫く沈黙が続いた後、日下部さんは口を開いた。
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