Parallel
2
「…………。」
身を起こすと、何時も通り、隣に男はいなかった。
シーツに手を這わすが、自分の隣の広いスペースは、既に冷たい。
「…………。」
いつも、そう。
壊されるかと思う位、強く、執拗にオレを抱くのに、男は行為が終わればベッドからいなくなる。
隣で眠る事も無い。
「……………。」
当り前な筈のその事実に、何故か胸が痛んだ。
「………………いつまでそうしている気だ。」
「……………。」
突然声を掛けられ、オレはそこで漸く、部屋に自分以外の存在がいる事に気付いた。
入り口付近の壁にもたれかかるように、腕組みをして立っている男には、見覚えがあった。
漆黒の髪に、縁無し眼鏡の奥の怜悧な黒壇の瞳が印象的な美人。
数日前に紹介された……確か名前は、
「……日下部さん。」
オレが呼ぶと、彼は不快そうに、片眉を上げた。
「…総長の命令で、君の護衛をする事になった。…出掛けるから、早く支度をしてくれ。」
淡々と告げる言葉には、微塵の愛想も無い。
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