Parallel 7 男はオレに気付き、興味深そうに目を眇める。 「…本に興味があるなら、勝手に読んでろ。」 全てを見透かすような青い瞳に見つめられ、居心地悪く俯くが、男はそれ以上オレに構うつもりは無いのか、直ぐに視線を外す。 再び手元の書類に目を落とした男に、オレは詰めていた息を吐いた。 存在を忘れられたかのように、男はそれ以上、オレに干渉してはこなかった。 オレは、ゆっくり本棚に近付き、見上げる。 背表紙を見ていくうちに、意外な事に、男が読書家な事が分かった。 経済等の専門書だけで無く、歴史や天文学、果ては推理小説まである。 また、それらの並びは、嫌いな人間には出来ないような、細やかな配置がジャンル別になされていた。 それに感心しつつも、オレは本を手に取る気にはなれないでいる。 「……………。」 興味が無い、わけじゃない。 ただ、本を読む、という行為さえ、生きるという事に繋がりそうで。 知識を得て、 オレはどうするの。 生きるか死ぬかさえ決まっていないのに。 それとも、こんな風になし崩しに生きる事を、オレは望んでいるのだろうか? . [*前へ][次へ#] [戻る] |