Parallel 3 「………何。」 端的に返すと、男は無表情のまま、此方へ一歩踏み出す。 オレの前に佇む男を、オレは見上げた。 冷たい瞳が、何の感慨も無く、ただ見下ろしている。 …もし、死神という存在がいるのなら、 きっと、この男の様な姿をしているんじゃないだろうか。 「…死にたいのか。」 責めるでも無く、哀れむワケでも無く、静かに男は問うた。 事実、このまま此処にいれば、そうなる可能性は高い。 「…………。」 オレは、無表情な男の顔を見ながら、考える。 オレは今、死にたいの? 「………分からない。」 視線を落とし、正直に返す。 死にたいかなんて、分からない。 ――でも、 「…でも、生きたいか、も、分からない。」 小さな世界に生きていた。 狭い世界に生きていた。 お世辞にも余裕がある生活じゃなかったオレは、自分の周りを護るので精一杯。 手の届く場所と、すぐ傍にいる大切な人だけが、オレの全て。 世界の名は、『母』と『弟』。 ――世界の全てを失った、今のオレにとっては、 『死ぬ事』も 『生きる事』も 同じ言葉にしか思えなかった。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |