Parallel
2
「…おい。」
唐突に、静かだったオレの世界に、知らない声が割り込む。
「…………?」
オレは其方を見て、無意識のまま目を眇た。
逆光で、長身の影だけが、目に焼き付く。
やがて徐々に慣れていく視界に、不躾に踏み込んできた美声の主の姿が映し出される。
「………、」
シックなスーツの上に、黒のロングコートを羽織った男は、年は、さほどオレと変わり無いように思えたが、同じ生き物である事が信じられない位、異質に見えた。
血が通った、生物なのか、
――アレは。
後ろに撫で付けた艶やかな漆黒の髪や、完璧に着こなされた質の良いスーツのせいだけでなく、微塵の隙も無い。
整いすぎた美貌は、人形か彫刻のようだ。
特に、深海みたいな藍色の瞳は、温度、というものが、一切感じられない。
「…………、」
呑まれる――、
人を、全てを飲み込む、闇だ。
アレは。
「……おい、お前。」
もう一度、男が呼び掛ける。
…おそらく、オレに。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!