Parallel 1 小さな世界に、生きていた。 「……………。」 薄汚れた、狭い路地裏。 バーの裏口に続く階段にオレは、腰掛けた。 空の瓶が乱雑に置かれているコンクリートの階段は、無機質に冷たく、触れた所から体温を奪う。 白く凍った自分の息が、消えてゆくのを追うように、ぼんやりと空を見上げた。 ビルとビルの隙間、切り出されたような長方形の空は、今にも泣き出しそうな曇天。 この寒さの上、雨に濡れては死ぬかもなぁ、と何処か他人事の様に思う。 分かっていても、動く気になれず、オレはそのまま、じっと空を見ていた。 ……ヒラ、 「……………?」 どのくらい、そうしていただろう。 目の端を、白い何かがかすめた。 ヒラ、 「……………。」 相変わらず空を見上げたままのオレの頬に、 ヒヤリ、と何かが触れる。 その正体にオレが思い至る前に、ソレは溶けて、涙みたいに伝い落ちた。 「……ゆき。」 手を伸ばす事も出来ない。 あんまりにも、綺麗すぎて。 ヒラヒラ、ヒラヒラと 幻想的に舞い降りる雪に、オレは、馬鹿みたいに見惚れていた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |