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ケージ内恋愛@[暁凛]
150万打記念小説。
(3位 御門 暁良)
※パラレルで恋人設定です。
「ごめんね、りっちゃん!」
「ううん、大丈夫!じゃあ行ってきます!」
忙しなく手を動かしながらも、申し訳なさそうに謝るしずかちゃんに手を振り、オレは資料室から飛び出した。
放課後の人気の無い廊下を、バタバタと足音をたてながら全力疾走する。
良い子は真似しちゃ駄目だよ!!
もうすぐ球技大会の為、生徒の殆どがグラウンドや体育館に集まっているから、人にぶつかる心配も少ないし、
何より時間が勿体ない。
球技大会の他にも、近いうちに行事が目白押し。
生徒会は過労で死人が出るんじゃないかという位、忙しい。
オレは役員ではないけれど、
あの天上天下唯我独尊な俺様の傍にいる為、仕事も多少分かるし…あ、雑用ね、あくまで。
と、いうわけで、猫の手にもならないけれど、少しだけお手伝いをさせてもらっているわけだ。
「お。ナイスタイミング!」
前を通過しようとしたエレベーターが、丁度この階にいるのを確認し、オレは立ち止まりボタンを押した。
金の無駄!と思っていたエレベーターも、今だけは重宝する。
とっとと資料届けて、しずかちゃんの手伝いに戻らなきゃ。
気が急くオレは、開いた扉に、直ぐ様飛び乗った。
「………げ。」
飛び乗って、後悔した。
身を翻そうとしたオレの進路を、バンッ、と壁についた腕が塞ぐ。
その間にも、扉は閉まり、
「…………、」
ため息をついたオレの耳元に、低い美声が囁きかける。
「――何処へ、行っていた。」
ああもう。
クソ忙しいくせに、待ち伏せなんてしてんじゃねぇよ。
内心で毒づきながら、オレはやけに近い位置にいる男の胸を押し、一歩離れた。
「…資料室。しずかちゃんの手伝いしてたの。」
「…へぇ。」
見上げた先、寸分の狂いも無い出来過ぎた美貌が不機嫌そうに歪められた。
口元は皮肉げな笑みを浮かべているが、藍色の瞳は全く笑っていない。
…正直怖い。
「恋人を放置して、他の男と密室に二人きりでいたわけか。」
「…変な言い方しないでよ。仕事手伝ってたんだってば!」
ほらっ、と苛立ちながらも手元の資料を見せても、男はオレ以上に苛立った様子のまま、瞳を眇める。
「手伝いがしたいなら、オレのを手伝え。…いつ離れていいと、許可した。」
「…っ、」
…手伝いたい、とは思った。
忙しそうに動くしずかちゃん以上に、大量の書類に囲まれて、あちこちに指示をとばして、
何か出来ないかな、と思ったよ。
――でも、怖くて聞けなかった。
誰より有能で、何でも出来てしまうアンタの足手まといになっちゃうんじゃないかって。
…寧ろ、いるだけでも、邪魔に思われていたらどうしようって、
そう思ったら、怖くて聞けなかったんだよ。
「…………、」
それに、しずかちゃんの仕事が終われば、彼が手伝ってくれるじゃないか。
御門の右腕的立場にいるしずかちゃんなら、きっとオレが出来ない事も出来るって、思って。
………でも、そんな事、言えるわけ無い。
「………別に、誰を手伝ってもオレの勝手でしょ。」
…ああ、オレの馬鹿。
御門を前にすると、オレの口から出るのは憎まれ口ばっかり。
全く素直になれない。
「…そうかよ。」
「…っ、」
御門は擦れた声で、低く呟くと、
バンッ、と乱暴に壁を殴り付けた。
「っ!?」
ガタンッ、
御門が殴り付けたのは、何かのスイッチだったのか、エレベーターは大きな揺れと共に、急停止した。
「…な、」
驚きに目を瞠ったオレが振り返ると同時に、顔のすぐ脇に両手をつかれ、囲い込まれた。
薄暗い灯りの中、獰猛な光を宿した瞳が、オレを捉える。
「…お前の体に教え込んでやるよ。お前が誰のモンなのか。」
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