Under
3
「………フゥ、」
寝室のドアを開け、オレは濡れた髪をタオルで拭いながら、中へ入った。
「…………。」
灯りを付けようとして、手を止める。
窓からさす月明かりが、ぼんやりと部屋を蒼く染めていた。
やけに大きく見える蒼い月をぼんやりと眺めながら、ベッドに身を沈める。
…ボスッ、
「…?、…………あ、」
頭にあたった何かを指で手繰り止せてみると、それは黒さんのシャツだった。
脱いだまま放置されたんだろうソレに、オレは苦笑する。
洗い物くらい、やっておいてあげようかな、なんて考えながら、オレは、ふと手を止めた。
「…………。」
…当り前、なんだけど、
――黒さんのにおいが、した。
馬鹿みたい、もしくは変質者だよなぁ、なんて情けなくなりながら、オレはそっとその大きなシャツを羽織ってみた。
黒さん愛用のフレグランスの香りが、オレを包み込む。
「……黒、さん。」
香水の香りに混じって、彼本来のにおいもした。
落ち着いていて、…でも、頭の芯がクラクラするような、香り。
まるで、遅効性の毒か、
――媚薬のような。
「……………っ、」
ああもう、オレの馬鹿。
こんなんなっちゃって、どうすんの。
あの人はいないのに。
オレ、一人なのに。
まるで、抱き締められているような錯覚がして、
馬鹿みたいに体の熱が、煽られた。
「…………。」
罪悪感と羞恥心が、オレを襲う。
でも、それに目を瞑り、バクバクと煩い心臓をおさえ、オレはソロリと、足を開いた。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!