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9


「…黒さん。」
「…ん?」


「手、とって下さい。」
「………。」


黒さんは一瞬、虚を突かれたみたいに目を瞠ったが、腕の拘束を解いてくれた。


これで、漸く。


ぎゅう、と黒さんの頭を両手で抱き締めた。


「……凛?」


膝立ちで彼を抱き締めるオレを、黒さんは戸惑ったように見上げた。


「…貴方がくれるものなら、オレは何だって嬉しい。気持ちも、束縛も、…痛みさえも。」
「っ…、」


貴方がオレの不安を溶かしてくれたように、
オレも貴方の杞憂を払いましょう。


だって、貴方が貴方である限り、オレが貴方を厭う日なんて、絶対に来ない。


貴方がくれたなら、疵さえオレの宝物です。


「……本当、お前は、オレをたらしこむのが、上手いな。」


クックッ、と喉を鳴らし、黒さんは苦笑する。


「人聞き悪いですよ。…口説いてるって、言って下さい。」


大差ない事を胸を張って言うと、黒さんは、おや、と意外そうに目を瞬かせた。


「…嬉しい事、言ってくれんな。…口説いてくれんなら、直ぐにでも落ちるぜ?」


楽しそうに笑いながら、黒さんはオレの愛撫を再開した。


「…んっ、…ちょっと、待って…、黒さんっ………このままここでするの…?」

「勿論。」


顔を赤くしたオレに、黒さんはアッサリと答えた。


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