Under
8
息を飲む音がして、オレを追い上げていた黒さんの手が止まった。
代わりに後ろから、縋るみたいに抱き締められる。
「……黒さん?」
「………カッコ悪ぃな。」
ボソリ、と独り言のように、呟かれた言葉。
苦い苦い音で、黒さんは、言葉を紡ぐ。
「…どんどん心が狭くなってく。こんなんじゃ、いつかお前を壊しちまいそうだ。」
「………。」
体制を変え、オレは黒さんと向き合うように動いた。
滅多に無い見下ろす体制で、彼を覗き込めば、秀麗な美貌は、愁いをおび、いつもの余裕は無い。
「…凛、……凛、」
ぎゅう、と強い力で抱き締められる。
希うように名を呼ばれ、胸が締め付けられるように痛んだ。
拘束されたままの腕が、もどかしい。
――これじゃ、貴方を抱き締め返す事も出来ない。
「黒さんっ…、………妬いてくれたの…?」
「……当たり前だ。」
憮然と呟かれた言葉に、涙が零れ落ちた。
ああ、本当だ。
青さんの言う通り、差なんて無い。
オレが想うのと同じだけ、この人もオレを想ってくれている。
戸惑うくらい、強く。
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