Sub 10 バンッ 車を停止させ、御門が降りてきた。 オレらから5メートル位離れた場所で、足を止める。 「不粋だな。」 「どっちがだ。…返してもらうぜ。」 「……。」 御門を睨み付けたまま、黒さんは、静かに口を開いた。 「どんなにお前が執着しても、コイツはやらねぇ。」 黒さんは、自分の肩口にオレの額をくっ付けるように、オレを抱き寄せた。 「…………。」 御門は暫く無言でオレ達を見ていたが、やがて『興が削がれた』と言わんばかりの顔で、踵を返した。 「車を出せ。」 「…はっ。」 車に乗り込んだ御門は、窓を開け、いつものように、艶然と嗤った。 「またな。…次は逃がさねぇから、覚悟しておけ。」 「次はねぇよ。」 憮然と呟く黒さんに、オレは漸く安心し、笑った。 ブロロロ…と排気音をたてて去っていく車を見送り、黒さんは『帰るか』と、オレにメットを被せた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |