[携帯モード] [URL送信]

Sub
献身と悔恨の狭間。
《青さん&凛》
※青さん視点。




幸せであれば、いい。





本気で、そんな偽善じみた思いを抱けたのは、


お前だけだった。



「………おい。」


ゴン
「痛っ!?」


テーブルに頬杖をついたまま、ぼんやりと意識を飛ばしていた陰を、後ろから少々強めにこづいた。


「………青さん、」


頭を押さえつつも、振り返りオレを見た陰は、文句を言うでも無く、ただオレを呼んだ。


そのらしくない反応に、オレは眉間にシワを寄せる。


いつものコイツなら、物怖じせずに、ブーブー文句を言ってくるのに。
こんな風に、沈み込んで悩んでいるコイツなんて、見たくないのに。


「……暗ぇぞ。」


「…そうですかね?」


指摘しても、力無く笑うだけ。


「………。」


ポケットに突っ込んだ右手を、ギリ、と強く握り締めた。


コイツをこんな風にしてしまった原因を、オレは知っている。


いや、オレだけじゃない。


隠しもしない、あの馬鹿の愚行は、チームの殆どの奴が知っている。



初めて聞いた時は、マジに殺意が芽生えた。


総長とコイツの間に割り込んで、
無理矢理騙すみてぇに付き合いを始めておきながら


尚且つ、浮気なんざして、コイツを苦しめるなんて許せるはずがない。





オレは、コイツに幸せになって欲しかった。


いつもヘラヘラ笑っていればいい。


今迄にあった苦しい事や哀しい事の何万倍も、コイツに幸せだけが降りそそげばいい。



抱えきれない位、大切なものをつくって、いつでも笑っていて欲しかった。




なのに、



何故ここ最近のコイツは、

いつでも泣きそうな顔をしているんだ。




「……陰、」


「はい?」


オレが呼ぶと、無理に浮かべる、ぎこちない、笑顔。



こんな顔が、みたかったんじゃない。



総長の隣で、幸せそうに笑うお前を見て、


この感情を、封印しようと思った。


オレが好きな、その緊張感の無い顔で、ずっと笑っていてくれるなら、


この、時折疼く胸の痛みにも、目を逸らし続けようと思った。





なぁ、陰、


オレは、―――




そんな顔をさせる為に、






お前を
諦めた訳じゃない。

(何処で、間違えた。)


END

[*前へ][次へ#]

5/8ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!