Sub
2
「お願いがありますっ!」
バンッ、と音をたてて扉を開けると、呆気にとられたような顔の誠さんと青さんが出迎えた。
そう。
オレが道場破りのように飛び込んだのは、《陰/陽》の溜り場である『Liar』。
誠さんが経営するお店だ。
今日は集会は無いので、店には誰もいないと思ったんだが、用があったのか、青さん一人だけがいる。
「…陰、よく分からんが、とりあえず座んな。」
誠さんは、半泣きのオレを、手招きする。
呼ばれるままに、テコテコ歩み寄り、青さんの隣のカウンター席に座った。
「ちょっと待ってな。」
誠さんは、そう言って厨房に入って行く。
俯いたまま、自分の膝を見ていると、グイッと青さんは、自分の袖口で、オレの目元を拭った。
「…何ベソかいてんだよ。誰かに虐められたか?」
からかうような口調なのに、声は凄く優しくて、また新たにジワリと涙が浮かびそうになった。
「そんな命知らずいんのか?」
コトリ。
揶揄する声とともに、オレの前に、まるっとしたマグカップが置かれる。
誠さんが作ってきてくれたのは、ホットミルク。
香り付けにブランデーを垂らしたソレは、オレが好きなもので。
「暖かいうちにどうぞ。」
そう言って笑ってくれた誠さんに、オレもつられて笑った。
「…ありがとうございます。」
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
無料HPエムペ!