Sub 拍手@ 桐生視点。 《斎藤凛についての考察》 桐生鴇の場合@ (出会い編) 斎藤凛と教室以外で、初めて会話したのは、入学式から10日程たった日だったと思う。 資料を準備室まで運ぶのを手伝わせたんだが、アイツは実に分かりやすく、嫌な顔をしていた。 面倒な事でオレの時間を潰してんじゃねぇよ。 そんな思考がありありと伝わって来る。 コイツ見た目と随分違うなって、少しだけ興味を持った。 「じゃ。ここでいーすか?」 「いやいや。そこ床だから。せめて机に置こうぜ。」 そう言うと斎藤は、書類で溢れかえったオレの机を一瞥して、そのまま床に資料を置いて、出て行こうとする。 「じゃ。オレはこれで。」 「いやいやいや。諦めるなよ。今片付けるから。」 ガサガサと適当に、書類を引き出しに突っ込もうとすると、後ろから手が伸びて来た。 「……センセ。このプリント、大事なものっぽいけど。」 言われて見ると、明日の会議でつかう資料だった。 「お?本当だ。」 「…これも。後、これもだったりしない?」 「おお。良く気付いたなー。」 ハハ、と笑いながら適当に書類の山を退かそうとすると、ボソリと小さな声が聞こえた。 「………ィ。」 「ん?」 「ステイ!!」 「ぅお!?」 突然のでかい声に、おもわずビクッと手を止めた。 「……。」 バサッ。 無言で斎藤は、固まったオレの手から書類を奪い取って、代わりに持っていた資料をオレに押し付けた。 オレの目の前で、書類がテキパキと分けられて行く。 ものの数分もしないうちに、オレの机の上は綺麗に整頓されていた。 「…すげぇ。」 「…大人なら出来て当然です。」 さりげに『大人失格』と言われたようなモンだが、気にならない位オレは感心していた。 「じゃ。オレはこれで。」 用は済んだとばかりに、さっさと帰ろうとする後ろ姿に、オレは慌て声をかけた。 「ありがとな!助かった。」 笑顔で礼を言うと、無表情だった斎藤は、少しだけ、目を瞠った。 「……。」 ペコリと頭を下げて部屋を出て行く。 変わった奴だなーって、思った。 面倒見が良いってゆーか。 しっかりしてるってゆーか。 何て言えばいい? …ああ。 分かった。 アイツのその時の印象を、一言で言うと。 オカンっぽい。 END [次へ#] [戻る] |