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拍手F 西崎視点。


《この世で一番理解不能な生き物→親友@》
西崎と凛の日常



「……よし、さぼろう。」


「……何故そうなる。」



腰に手をあて、胸をはり、堂々とそう言ってのけた斎藤に、オレは長いため息をついた。

…コイツの突飛な発言には慣れた気がしていたが、気のせいだったらしい。


痛む頭を押さえ、オレは斎藤を見上げる。



「…さぼるのを咎める程オレは清廉ではないが、最低限の課題は提出せんと、教師に睨まれるぞ。」


「だーかーら、忘れた!んだってば。」


…少なくとも、胸をはって言う事ではない。




まぁ要は、本日提出期限の課題を、斎藤が忘れていた、という話なんだが。


「いいじゃん。ハルちゃんはとっくに提出してるんだし!」


そう言って斎藤は、オレの手を掴んで歩きだした。


「………分かったから手を離せ。」


ハァ、と嘆息すると、斎藤は振り返って勝ち誇った顔で笑った。


…いつからオレは、こんなにお前に弱くなったんだか。


結局、辿り着いたのは保健室。

養護教諭はどうやらいないらしい。


「…で?」


一応訊ねてみたオレに、斎藤は至極真面目な顔で言い切った。


「モチロン寝るんだけど?」


…反論するのもアホらしい。
さっさと潜り込んだ斎藤にならい、オレも隣のベッドに入った。



………?



横になった途端、倦怠感が体を襲う。


…気が付かなかったが、どうやら熱があったようだ。

最近、遅くまで調べ物をしていたせいか。



斎藤の気紛れに感謝しながら、オレは落ちていく意識に身を委ねた。







―――ヒヤリ。

……?


深く沈んでいた意識が、額にあてられた冷たい感触に、急速に浮かび上がる。


ぼんやりと薄く目を開けると、まず目に入ったのは、心配そうな顔の斎藤と、優しい、手。



オレが起きた事に気付いておらず、斎藤は、そろり、とオレの額に、冷却シートを貼る。


何となく気まずくて目を閉じると、肩口まで掛布を引き上げ、ポン、と優しく手で叩いた。


「…全く。自分の体には無頓着なんだから。」


ため息と、苦笑の気配。



ああ、何だ。


とっくに気付かれていたのか。



オレが具合が悪い事が分かっていたからコイツは、サボろうなんて言い出したんだ。


サラ、と髪を撫でる指の感触。


…時々コイツは、いつもの様子が、見せ掛けなのでは、と疑いたくなる位、大人びた顔をする。


きっと、今も。



何となく負け気分になりつつも、オレは再び、眠りに落ちる。



優しい指に、導かれるように―――。








「…………。」


ハァッ。



目覚めたオレは、深いため息をついた。



眠る前まで大人びた仕草でオレの看病をしていた筈の斎藤は、いつの間にかオレの隣で気持ちよさそうに寝息をたてている。

…看病はどうした。



その顔に、さっきまでの面影は、ゼロだ。



…結局、コイツの意図は分からない。

オレが心配だったのか、
課題提出が嫌だったのか、
それとも自分が眠かったのか、




………何も考えてないのか。



とにもかくにも、コイツは通常の物差しでは計れない奴だと分かった。




オレの情報を以てしても、お前だけは読み解けない。



この世で一番不可解なものは何か、と問われたら、



オレは迷わず、お前の名をあげるぞ。



なぁ、斎藤。




END

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