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「……。」
ハ…、と深く息をした武藤は、オレに腕を伸ばした。
握っていない方の手で、オレを自分の方へ引き寄せる。
「……武藤?」
武藤は、オレの肩口に顔を埋めた。
「……情けねぇな。お前を気にする前に、テメェをどーにかしろって話だ。」
武藤は自嘲気味に、そう呟いた。
「…んな事無い。悪い夢くらい、誰だって見るよ。それに、オレが雷苦手な事、気にしてくれて、オレは嬉しかった。」
武藤の隣に潜り込みなおして、そう笑うと、武藤も微かに微笑した。
「……どんな、夢?」
「……忘れた。」
武藤はそう呟くと、再び寝る体制で、オレを抱き込む。
暖かい体温に包まれて、オレも、もう一度、瞳を閉じた。
ゆっくり沈んでいく、意識の中、ぼんやりと頭の片隅で何かを聞いた気かしたが、もうそれ以上は、意識を留めておけず、オレは眠りに落ちていった。
だから、知らなかった。
武藤が、オレの髪を撫でながら、
泣きそうな顔で、笑って
「……ホント、情けねぇ。」
「未だに、お前が落ちる夢を見るなんて、な…。」
そんな事を呟いていたなんて。
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