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赤頭巾ちゃん@
※狼な黒さん&チビ赤頭巾凛のお話です。なんちゃってファンタジーです。おK?
〜♪
よく晴れた、長閑(のどか)な昼下がり。
森の中の小道を進む、小さな影が一つ。
「おばおばおばおばおばあちゃーん♪おばあちゃんちはどこですかー♪」
うごうごと進む物体の正体は、小さな男の子でした。
サラサラで真っ黒な髪に、こぼれ落ちそうな大きな瞳。健康そうなピンク色の頬っぺたの5才位の少年は、元気に自作の歌を歌いながら小道を歩いています。
目的地を見失っていそうな歌詞とは裏腹に、迷いのない足取りで。
「おばおばおばおばおばあちゃーん♪おばあちゃんちは森のなかー♪」
ゲシュタルト崩壊を起こしそうな位呼ばれたお祖母さんの家は、この先、森の奥にあります。
少年は、祖母の家までお使いを任されているのでした。
大事な大事な任務です。
小さな体で一生懸命抱え上げているのは、焼きたてパンとワインの入った籠。
それを、お祖母さんの家まで運ぶ事が、少年の大切な任務の内容です。
末っ子である少年は、家族にそりゃあもう大切にされています。本来なら一人でお使いなんて有り得ません。
けれど、甘やかされ、家族の助けに何一つなれない事に、少年は小さな胸を痛めていました。
父と母、それから上から三番目の兄以上は、働いていますし、四番目、五番目の兄もバイトをしています。
少年の双子の兄は、働きはしないものの、生来の器用さを発揮して良くお手伝いをしているのです。
自分だけが何も出来ないと、大きな目からボロボロと涙を溢した少年に、家族は慌てました。
そして苦渋の選択が、祖母の家までのお使いです。
そしてこのお使いは、今日で十回目となりました。
最初こそ、ストーカーよろしく連なってついてきていた兄達は、5回目のお使い時に少年に見つかり、再び泣かせてからは自粛しているようです。
「ふわふわぱーんは三こまでー。わいんはにがにが飲んじゃだめー」
ちなみにこの歌詞は、長兄である白の作詞です。
『お腹が空いたら籠にあるパンをお食べ。三個までならいいからね。ワインは飲んではいけないよ』の意です。
籠の中のパンは最初から三個だけ。カウントした意味は皆無です。
最悪ワインだけ届けば充分だと思っている長兄が甘いのは末っ子にのみ。
「ふふふふーん♪」
歌詞を投げ出した彼が歩く度に、真っ赤な猫耳フードがモコモコと揺れます。
可愛らしい猫耳パーカーは、四男、朱(アカ)がデザインし、三男、玄(ゲン)が縫いました。
そのパーカーの両ポケットはパンパンです。
5番目の兄である虎がチョコやらクッキーやら飴玉を、これでもかと詰めたからです。
「おばぁちゃんちまであとふふふ〜ん♪」
具体的な距離は濁しましたが、祖母の家まであと半分程。もう少ししたら着く花畑で、いつも休憩しています。
それを楽しみにしている少年は、軽い足取りでジャンプしました。
首から下げている銀色のホイッスルが、シャラリと揺れました。
出かける前に、次兄の青が少年に渡した、とても遠くまで響く笛です。
『何かあったら吹け。一瞬で駆け付けてやるから』
そうニヒルに笑った次兄は、女の子でも口説くみたいに少年の髪にキスしました。勿論少年には何一つ伝わっていませんが。
「おつか〜いおつかーい、はやく終わってかえらなきゃ〜」
今、少年の頭の中では、出かける寸前まで自分から離れなかった双子の兄、陽(ヨウ)の事が思い出されています。
風邪をひいて熱がある為、陽は一緒にこれませんでした。絶対絶対絶対、すぐ帰ってきてね、と縋りついてた兄の為、少年は少しだけ早足になりました。
お祖母さん家まで、あと半分。
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