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Thanks [親友トリオ]
サラリ、と柔らかな風が、前髪を揺らす。
背中にあたる堅い感触のコンクリートは、日差しに暖められた熱を適度に伝えてくる。
ゆっくりと目を開けると、突き抜けるような蒼天と白い雲のコントラスト。
「……空が高いねー…。」
気持ち良さに目を細め、幸せを噛み締めるように呟く。
返事は無いが、不満に感じるどころか、沈黙が心地好い。
お昼を食べたばかりでお腹いっぱいで、
天気が良くて、暖かくて、
傍には大好きな友達。
なんて、贅沢なんだろ。
「………っくしゅ、」
ムズ、と鼻を掠めた風に鼻腔を擽られ、小さくくしゃみをした。
…花粉かな。
スン、と鼻を鳴らし、再び目を閉じようとすると、
「うわっ!?」
ぐいっ、と体を引き寄せられる。
「ちょ、…なに。」
引き寄せたのは、間をあけた隣で昼寝していた武藤だった。
驚きに声をあげるオレを無視し、懐におさめるように抱き込む。
腕は腰に廻され、頭には顎をのせられてしまえば、身動きをとるのも難しい。
「…なんなのー?」
「…ひ弱なモヤシは、大人しくオレの湯たんぽになってろ。」
「…………、」
…あれあれあれ?
言い方はアレな感じですが、もしやこれは心配してくれたりする?
オレは嬉しさと照れ臭さに、頬が赤くなるのを感じた。
「……………。」
別に寒くてくしゃみをしたわけじゃないけど、武藤の腕の中は暖かい。
ぬくぬくの温度に包まれ、オレはウトウトと舟を漕ぎだした。
…ああ、ヤバイ。
マジ寝したら起きられる自信無いなぁ。
サボりたい…けど午後一の授業、数学だし、センセに大量の課題を出されるのも嫌だ。
頑張れオレ。
寝るなオレ。
「………寝ろ。」
「……へ?」
武藤ではない声に顔をあげると、落下防止のフェンスに寄り掛かり、我関せずといった様子で本を読んでいた西崎だった。
ペラリ…
ページを捲り、本に視線を落としたまま、西崎はもう一度言う。
「…眠いなら、寝ろ。………起こしてやるから。」
素っ気ない言葉。
でもさり気ない気遣いと、優しさのこめられた、西崎らしい言葉。
「………うん。」
オレは小さく頷いて、目を閉じた。
目が覚めたら、
おはよう、と
ありがとう、を言おう。
ついでに大好き、なんて言ったら、
馬鹿か、って呆れられるかな。
それでもいい。
伝えたいんだ。
こんな日常の何気ない事が、
『当り前』が、
愛おしいんです。って。
END
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