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クリスマス小話。
《陰/陽》メンバーによるクリスマス話です。
※誠さん視点です。
「お?」
「メリークリスマス!」
店が開く数時間前。
《陰/陽》幹部連中だけが店内におり、各々寛いでいる中、店のドアを開け、楽しそうに入ってきたのは、可愛らしいサンタ…陰だった。
今日は、黒ともども、来ないと言っていた彼は、服装はいつもと同じだったが、白いファーに縁取られた真っ赤な…サンタの被る帽子をのせて、なんとも可愛い姿だ。
幹部連中も、ポカーンと見ている。
…たかが帽子一つの、コスプレとも言えない姿に萌えたのはオレだけでは無いらしい。
寧ろ、いつもの服に、帽子だけ、というのが、余計可愛い。
彼女が、ちょっとした悪戯をしてみた、みたいな感じで。
「今日は、こないんじゃなかったのか?」
オレがトリップしている間に、一番先に立ち直ったのは玄武で、
陰は楽しそうな笑みを益々深めながら、玄武に近寄った。
「これだけ渡しにきました♪」
そう言って、玄武に陰が差し出したのは、クリスマスっぽいラッピングがされた小さな袋。
「中身はジンジャーマンクッキーです。」
メリークリスマス、と笑う陰に、玄武は、優しく目を細めた。
陰だけに見せる、暖かい表情で、ありがとう、と頭を撫でる玄武に、陰は嬉しそうに頷く。
その他の奴らも、漸くいつも通りな様子で、陰のクリスマスプレゼントを受け取った。
…いや、いつも通りじゃねぇな。
朱雀はいつもと違い、裏の無い嬉しそうな顔だし、
青は、彼女でも愛でているかのような、甘い目で見てるし、
白は、珍しくも少し戸惑いながらも、陰の手作り菓子に感動しているし、
陽に至っちゃ、花が飛び散ってる。
「どうぞ、白虎さん。」
「………甘くしてあんのか?」
「ちゃんと白虎さん仕様になってますよ。量も多めにしときました♪」
「…そうかよ。」
いつもは他の奴と違って、陰の扱いが乱暴な白虎すらも、微かに笑って受け取っている。
本当、凄いわ、この子。
「誠さん?」
「お?」
気付けば、陰はオレの前で首を傾げていた。
「どうかしました?」
「いいや。何でも無いよ。」
苦笑するオレを不思議に思いつつも、陰は最後の一個の包みを、オレの前に差し出した。
「…オレのもあるの?」
「はい。メリークリスマス!」
可愛い可愛いサンタから、プレゼントを受け取りつつ、オレはだらしなく顔を緩め、礼を言った。
「…ありがと。」
ペタンコになった袋を折り畳む陰に、礼にもならないが、暖かい紅茶をいれるから座ってて、と促す。
周りも、今からプレゼントを用意するから待ってろ、と告げるが、陰は困ったように眉を寄せた。
「お気持ちだけで…えっと、オレ今から…」
ガチャ
「陰。」
陰が、何かを告げようとしたのと同時に再び扉が開き、低めの甘い声が、響いた。
「黒さん。」
可愛いサンタは、嬉しそうに瞳を輝かせ、パタパタと駆けて行ってしまった。
「お待たせしました!」
「もういいなら、行くぞ?」
そう優しく瞳を細め、サンタ帽をとって、黒髪を直接撫でるのは、勿論、たった一人。
「…総長。」
黒は、青の呟きに、顔をあげ、オレらを見渡し、
ニィ、と意地の悪い笑みを浮かべた。
「悪いな。…このサンタは売約済みなんだ。」
抱き寄せ、扉から出ていく仕草も絵になる男に、全員の眉間に同じようなシワがよったのは、仕方ねぇ事だと思う。
END
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