Sub 5 「………武藤?」 「…んだよ。」 武藤はオレを抱き締めたまま、面倒臭そうに返事をする。 何つーか、すっかり寝る体制だ。 辞典はどうした。辞典は。 「…何なの。この体制。」 「寝ろ。」 「は?」 「このまま寝ろ。」 えぇー!? 何言ってるの、この人ー! 「いやいや。1人で寝れますよ。そこまでガキじゃないよ!?」 「…今日は明け方まで、天気荒れるらしぃぜ?」 「マジでか。」 …ここは一つ、滅多にない武藤の優しさを受け取るべきなのか? ……でも男子高校生が、同級生に添い寝を頼むのって、どうなの? …画的にも、ないな。 何か男として大事な何かを失いそうな気がするし。(深読み禁止) 「………。」 「…ぅぎゃ!?」 オレが悶々と考え込んでいると、武藤は無言で、オレの背中に手を突っ込んで、ツーと背筋を指で辿った。 「武藤ー!?」 武藤は、慌てふためくオレを押さえつけ、ニヤリと、薄い唇を歪めた。 「…いつまでもゴチャゴチャ考えてんなら、疲れ果てて眠れるくれぇ、啼かせてやってもいいんだぜ…?」 武藤ーーーっ!!? オレは声無き叫びをあげた。 「うぅ…。直ぐ様眠らせていただきますぅ…。」 「よし。」 武藤は、さっさと寝ろ、と言わんばかりに抱き枕よろしく、オレを抱き締めた。 ……。 ぎゅうって抱き締められた所から、ジンワリと熱が広がっていく。 雷の音も、遠くなった。 ……あぁ。何か。 安心する、かも…。 そこでオレの意識は途切れた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |