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if [黒さん独白]
※黒さん視点です。



―――もしも、




「…………、」


チチ…、


薄手のカーテン越しの柔らかな光と、耳に心地良い小鳥の囀り。


穏やかな目覚めに、ゆっくりと半身を起こし、ぼんやりと視線を彷徨わせる。


「……、」


直ぐ傍で小さく身動ぐ気配に、視線を落とせば、健やかな寝息をたてる愛しい存在。


柔らかな黒髪に指を絡め、撫でると、小さな声を洩らし、オレの手に擦り寄り、幸せそうな笑みをこぼすお前に、胸が締め付けられた。


幸せ、というのは、こんなにも


愛おしく
暖かく


恐ろしいものだったのか。



もし、

なんて言葉を使うのは、オレはあまり好きじゃねぇ。



もしも、と仮定しても、起こってしまった過去を覆す事は出来ないし、未来を引き寄せる事も出来ない。


過去の出来事に、どう折り合いをつけるか、とか
未来を如何に、自分の望む形にするかは、


結局は、自分次第。


実力でどうにか出来ない事なら、後は、運。


ならば、祈るだけ無駄だ。


なるように、なればいい。



そう、思って――いた。



でも、今は、ふとした時に、思うんだ。


例えばこうして、寝ているお前の髪を撫でている時、


例えば、おかえりなさい、と出迎えてくれたお前の笑顔を見た時、


例えば、買い物帰りの道で、くだらない話で同時に吹き出した時、



そんな何気ない日常に、


お前が、隣にいる幸せを感じる度に、オレは、



もし、と考えずにはいられない。



もしも、あの日、


外出しなかったら、


バイクが壊れていなかったら、


あの道以外を選んでいたら、


あの路地裏を、覗かなかったら、




お前に、会えなかったら、



そう、思うたびにオレは、感謝せずにはいられない。


お前を産み落とし、オレに出会わせてくれた全てに、



出会ってくれた、お前に。






――ありがとう、と。
(お前が傍にいる奇跡を、)
(オレは世界中に感謝したい。)


END

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