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シン○レラ(後編)
「てゆーか、そもそもオレ、舞踏会に行きたいなんて微塵も思ってないし。」
「全否定はやめてくれっか、凛ちゃん。」
「てなわけで、お帰りはアチラです。」
「追い払われた!!」
読みかけの本を閉じ、オレは、ふぅ、とため息をつく。
「魔法使いなセンセは、現状に大満足なシンデレラに、一体どんな魔法をかけようとしてんですか。」
オレの言葉に、センセは、おや、といった感じに目を僅かに瞠った。
「…まぁ元々、王子の元に行かせる気は無かったんだけどよ。かなりイイ能力持ってたりすんだよなー、オレってば。」
ニヤリ、と笑ったセンセに、オレは思わず身構える。
「…………イイ能力って、何?」
嫌々ながらも聞いたオレに、センセはヤケに爽やかに笑って言い切った。
「コスプレし放題♪」
「だが断る!!」
咄嗟に身を翻そうとしたオレの肩を、ガッとセンセは掴む。
「シンデレラが、虐められもしない、城にもいかない、挙げ句コスプレもしないとか、罷り通ると思ってんのか?」
「…………。」
優先順位おかしい、とか
コスプレっていうな、とか
そんな突っ込みは取り敢えず放棄した。
だってセンセの目、怖すぎる!!ヤーさんだよ!!
取り立てするヤーさんそのものだよ!!
出来ねぇとか言わねぇよなああん?みたいな。
「………………出来るだけシンプルなのにシテネー…。」
当然、そんな牙剥いてる肉食獣に立ち向かう勇気はありませんでした☆あは。
笑いたければ笑うがいいさ。
こちとら生粋の草食系なんだよ!!弁当男子とか好きに呼ぶがいいさ!!
「………………。」
センセは、じっとオレを見る。
カメラマンか、デザイナーのような真剣な目に、オレも思わず背筋を正す。
「じゃあまずは…巫女とかいってみっか。」
「待て。」
いってみっか。じゃねーよ。
誰か、真顔が何か格好良いとか思っちゃった数秒前のオレを殴り殺して。
「まんまコスプレじゃねーか!!いねぇよ!!舞踏会に巫女!!」
「舞踏会には行かなくていいっつってんだろ?」
「益々やる意味が分かんねぇ!!」
「巫女とか…ねぇだろ。」
「そうだよな!!…ってアレ?武藤?」
オレらが真顔で阿呆な言い争いをしている間に、いつの間に来たのか、窓枠に腰掛けた武藤がいた。
「舞踏会は?」
「分かってねぇ。オッサン、コイツにはナース服だろうが。」
「聞けや!!でもって何ですと!!?」
「ムッツリだなー相変わらず。桃色天使か?」
「馬鹿か…白だ。丈はミニで構わねぇが。」
「や、寧ろソコ、メインじゃねぇ?」
何話してるんだろうコノ人達。消エレバイイノニ。
「えー。元々可愛いんだから、クール系とか開拓すればいいのに。」
「…………。」
当たり前のように会話に参加する未来と、壁に寄りかかる西崎が、いつ部屋に入ったかなんて、最早どーでもいい。
「鞭持って教官系とか眼鏡かけて先生とか。」
「その場合スリットの入ったタイトスカートだな。教卓に腰掛けて足を組み眼鏡を押し上げ『いけない子ね…個人レッスンが必要だわ』とか。」
「…………エロ。」
え?馬鹿なの?君ら。
死ぬの?
「……………秘書。」
「「「!!」」」
今まで壁と一体化するように押し黙っていた西崎が、漸く呟いた言葉に、皆が振り返る。
「………秘書。」
「………うん、アリだね。」
「………イイな。」
「うん、お前等消えろ。」
怒りマックスとなったシンデレラは、恐るべき怪力で全員を摘み出し、魔法使いの杖を叩き折りました。
全てを夢だと思い込む為に、ベッドに入ったシンデレラは、その後、山のように送られてくる衣装…ってかコスプレ用の際どい服にマジギレする事になるとは、知る由もないのでした。
めでたし めでたし。
END
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