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竹○物語
※《陰/陽》幹部連による『かぐや姫』です。
でもかぐや姫らしさを期待してはいけません(笑)
「…………何でオレがかぐや姫なの?」
「妥当じゃねえ?寧ろお前以外だったら誰もめとりにこねぇだろ。」
ジトッ、と恨みがましい視線を向けるオレの髪を、お爺さん役の黒さんはワシャワシャ撫でて苦笑した。
「まぁ、オレ的には、お前が婆さん役でも嬉しかったけどな…?」
「ぎゃっ!?」
耳元で低く囁かれ、オレは真っ赤になった耳を押さえながら距離をとった。
そんなセクシーな声で囁く爺さん嫌だ!!!
「何処の世界に、かぐや姫にセクハラをする爺さんがいる。…危ないから、こっちへおいで、陰。」
突然現れた白さんは、冷ややかな眼差しで黒さんを一瞥したが、一転、優しい微笑みを浮かべ、オレを手招く。
そんな美麗な婆さんも如何なものだろう、と思いつつも、オレは素直に白さんの隣へと座った。
「月見団子、食べるか?」
「わー、食べる、食べます♪…そっか、今日満月かぁ………………アレ!?満月って、話終わらね?オレが月に帰って終わりじゃね??」
「大丈夫だ、陰。迎えは撃退しておいた。」
「や。全然大丈夫じゃないっすよ、ソレ。」
「ちなみに求婚者共も蹴散らしておいたぜ?」
「終わるどころか始まらないという衝撃的なお伽噺!!斬新すぎる!!」
お迎え迎撃、求婚者一掃って、どんなバイオレンスな爺さん婆さんだよ!?
「だって、何とかの子安貝だとか火鼠のなんちゃらだとか、別にいらねぇだろ?」
月見団子を摘んだオレの手を引き寄せ、パクリと食べながら、黒さ…、爺さんは事も無げに言った。
「…まぁ、ぶっちゃけ。」
正直に言うと、貰っても困る。
猫に小判、豚に真珠の、典型的例かもしれない。
そう、オレが納得しかけていると、いつの間に入り込んだのか、庭には、鮮やかな赤髪の猫目の青年が立っていた。
「そう言うと思うて、こんなん用意してみたんやけど?」
そう言って青年が差し出した箱は…、
「朱雀さ………!!!そ、それは、かの有名なチョコレートの老舗的な店の限定生チョコ…!!」
キラキラ目を輝かせるオレに、両脇から舌打ち。
でもチョコに釘付けなオレには聞こえない。
「ちょっと待ちやがれ。…おい、陰。コレも好きなんだろ?」
「!!!…あ、青さんっ!!その手に持っているのは、某パティシエの渾身の作、数種のベリーのタルト!!」
「正直婚約だのはどーでもいいが…ほらよ、土産だ。」
「白虎さん、いつの間に北海道に…てか、オレの大好きなバターサンド!!あざーっす!!」
「和菓子では駄目か?」
「喜んでー!!…やべ、嬉しすぎて居酒屋店員みたいな返しを……ぎゃー!!!ふんわりモチモチ豆大福!!!すぐに売り切れちゃうって有名なヤツだーvVありがとう、玄武さん!」
「敢えてチープに挑んでみました。」
「陽!!それって、コンビニに置いてある割にセレブなお値段のアイス各種!!種類あり過ぎて無理だけど、いつか制覇してやると目論んでいた夢がこんな所で叶うなんて…!!」
失神寸前なオレの前には、宝の山ならぬスイーツの山。
好きなものをこれだけ並べられ、何の興味も無いわ的な態度なんて、オレにとれる訳ない。
寧ろ違う意味で選べねぇ。
「…………。」
「…………。」
真剣に眉根を寄せるオレに、オレの後ろで保護者二人は、目配せをし、同時に頷いた。
「………結婚、しちまうのか…?陰。」
「…へ?」
「………オレ達を、置いて行ってしまうのか。」
「…は?」
何故か両脇から、至近距離に迫る美形二人。
近い近い。
つか、そんなキラキラした爺さん婆さんは…(以下略)
「なぁ、」
「陰…?」
「…っ、い、行かないです!!」
耳元に囁かれ、気付けばオレは、叫ぶようにそう言ってしまっていた。
……ああ、さよなら。
オレのお菓子の山。
マウントオブスイーツ。
「…んな顔すんなって。」
一転、ご満悦な顔でオレの髪を撫でる黒さんは、楽しそうに笑う。
「ちゃんとアレ、巻き上げてやっからよ…?」
「そうだぞ。オレ達のモノはお前のもの。あいつ等のモノもお前のモノ、だ。」
両脇の美形は、そう、優しくオレに囁いてから、ゆっくりと後ろを振り返る。
「…なぁ?」
「そうだよな、お前等…?」
「「「「「………。」」」」」
その沈黙は、イエスととるぞ、の呟きと共に、スイーツの山はオレの元へと戻ってきた。
何処のガキ大将理論だ、なんて突っ込みはどうだっていいお帰りスイーツ!!!
……こうして爺さんと婆さんとスイーツに囲まれながら、かぐや姫は、いつまでも幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
END
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