Main 4 …日下部先輩が、《ケルベロス》の幹部だって言われても、ピンとこなかったけど…そういう理由があったんだ。 いまいち置いてきぼりな頭の中を整理している間にも、西崎はたたみかけるように言葉を継ぐ。 「…志藤も、御門を裏切る事は無いだろう。あの男は本来、組織に組するようなタイプでは無いにも関わらず、『副』なんて立場に大人しく座っているのは、御門を認めているからだろうしな。」 西崎の、真剣な目を見つめ返す。 「…奴らには、奴らの事情と立場がある。線引きを間違えるな。」 ああ、そうか。 その言葉と、心配そうに陰った瞳を見て、思う。 敵なんだ、と認識させる事で、西崎はオレを、守ってくれようとしているんだ。 信じて、裏切られ、 オレが傷つかないように。 「……分かった。」 だからオレは、反論せずに頷く。 オレに大切なものや、護りたい場所があるように、 静ちゃんや日下部先輩にも、優先されるべきものがある。 信じるとか、 裏切るとかじゃなくて、 一番大切なものの為には、他を切り捨てなければならない事はあるんだ。 全部を選びとる事が出来る程、世界は優しく出来ているワケではないと、 オレも、もう、知ってしまっているから―――。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |