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…日下部先輩が、《ケルベロス》の幹部だって言われても、ピンとこなかったけど…そういう理由があったんだ。


いまいち置いてきぼりな頭の中を整理している間にも、西崎はたたみかけるように言葉を継ぐ。


「…志藤も、御門を裏切る事は無いだろう。あの男は本来、組織に組するようなタイプでは無いにも関わらず、『副』なんて立場に大人しく座っているのは、御門を認めているからだろうしな。」


西崎の、真剣な目を見つめ返す。


「…奴らには、奴らの事情と立場がある。線引きを間違えるな。」



ああ、そうか。


その言葉と、心配そうに陰った瞳を見て、思う。



敵なんだ、と認識させる事で、西崎はオレを、守ってくれようとしているんだ。


信じて、裏切られ、



オレが傷つかないように。


「……分かった。」


だからオレは、反論せずに頷く。



オレに大切なものや、護りたい場所があるように、


静ちゃんや日下部先輩にも、優先されるべきものがある。


信じるとか、
裏切るとかじゃなくて、


一番大切なものの為には、他を切り捨てなければならない事はあるんだ。


全部を選びとる事が出来る程、世界は優しく出来ているワケではないと、



オレも、もう、知ってしまっているから―――。


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