Main Side 静 ※静視点です。 「ただいま〜。」 バタン、と音をたてて、後ろ手に扉を閉める。 「遅ぇ。」 途端、不機嫌そうな声がかかる。 オレが声の方向を向くと、座り心地の良さそうな革の椅子に座り、長い足を執務机の上に投げ出した男が、冷たい視線でこちらを睨んでいる。 大抵の者が、矜持も何もかも投げ出して平伏しそうな、絶対零度の視線。 放つ空気も、肌があわ立ちそうにピリピリしていた。 …おっかねー。 内心でそう呟きながらも、ヘラリとオレは笑う。 「ごめんねー?…ちょっと面白い事があってさ。」 オレが笑顔を向けると、凍てつく美貌の男は、益々不機嫌そうに、柳眉をひそめる。 「…気持ち悪ぃくらい上機嫌だな…。」 その言葉に、オレはキョトンとした。 ……機嫌良いのか?オレ? 分からない。 自分の機嫌なんて、大して気にしないし。 まぁ、周りの機嫌は、もっと気にしないけど。 そっと、自分の胸に手をあててみる。 ……ああ、でも。 久々かも。こんな良い気持ちなの。 セックスの快感とは全然違う。 体は気持ち良くなって、テンション上がるけど、終わった後、決まって不快感が沸き上がる。 気持ち悪いんだよねー。人肌の温度と、あのベタつき…。 りっちゃんと一緒の時は、ただ暖かかった。 日向ぼっこしてるみたいなかんじ。 「…面白いコに会ったんだ。」 . [*前へ][次へ#] [戻る] |