Main 父の仕事 「…『紗鞠』って、あの、サマリ!?」 しずかちゃんが、唖然とした顔で呟く。 オレは苦笑しながら頷いた。 ご存知ですか?なんて言ったけど、よっぽど世情に疎い人ならともかく、大抵の人は知っていると思う。 安価でいい品を!!をモットーに、和と洋を組み合わせた独自のブランドを展開し、今や全国に数百店舗を誇るアパレル会社。 先頃、海外にも進出を果たしたとニュースでやっていた。 ちなみに近所のショッピングモールにも入ってます。 女の子にも人気だけど、メンズも扱ってるから、オレもたまに入ったりする。 正直、自分の親の会社だっていう実感は、ゼロ。 オレにとっちゃ、『テレビで見てたアイドルが、実はオレの義妹!?』とかのギャルゲー程に現実感がない。 「…………。」 言葉を失っている、しずかちゃんのお母さんに、オレは、困惑したような目を向ける。 「…あの、ご存知なかったら、無理なさらないで下さい。」 オレの言葉に、しずかちゃんのお母さんは、我に返ったように肩を揺らした。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |